越前大仏(再訪記)/福井県



福井県勝山市にある越前大仏



ここもまたほぼ20年ぶりの再訪となる。

考えてみたら20年ぶりに石川~福井に来たのに訪れるところは20年前とあまり変わらないなあ。


ま、20年越しの定期パトロールという事で…。

以前のレポートはこちら




ここ越前大仏は昭和62(1987)年に落慶したいわゆる「バブル大仏」である。


大仏自体を町おこしの起爆剤にしようと地元出身の実業家である多田さんというお方が私財でぶっ建てた漢気満点の観光寺院なのである。


とはいえ現在はあまり観光客もあまり多くない様子。


今回のパトロールで散々目にしてきた現実。

ハニベ巌窟院、ユートピア加賀の郷…

かつてはギンギンに輝いていたギラギラ系スポットだったのに今ではすっかりほぼ廃墟。

バブルって本当に残酷ですね。



商業施設ならば散々儲けて跡形もなく消えてしまうのだが、仮にも宗教施設だとそうはいかない。

宗教法人格を取得している以上、そうやすやすと看板を降ろすわけにはいかない。というか降ろさせてくれない。


かくしてここ越前大仏こと清大寺も建立当初の勢いをそのまま冷凍保存したかのような佇まいを見せているのだ。



門前の商店街。

かつては沢山の店が土産物を販売していたが、残念ながら今はほとんど空き家。

ただし、バブル期に作った建物ゆえ、見た目はそれなりに立派で綺麗な空き家となっている。




門前で参拝券を買う。

開山当初は参拝料が3000円だった。

その強気の価格設定で話題にもなったが、やがて2500円→1000円となっている(現在は500円)。

まだ販売しているだけマシ。

入場料も徴収されなくなったらそれは観光施設としてはほぼ廃墟であることを意味するから。




お地蔵さんが飾り付けられているのが救いだ。




で、山門。
 
今、改めて見ても立派な山門だ。

この20年間、色々な寺院を見てきた。

冗談のように豪華な寺。

驚くほど巨大な堂宇。

それらの寺と比べても決してひけをとらない立派な山門だ。


ただし。



訪れる参拝客は数名。

以前はもっと多かったような気がする…が、よく考えてみたら20年前もこんな感じだったような気もする。




山門の先には大仏殿が見える。

唯一テンション高めのアベックがバフバフ自撮りしまくっている。




山門には巨大な仁王像がいる。

唖形。




吽形。




大仏殿に向かう。

カップルは相変わらずテンションが高い。

ここでこのテンション、幸せそうだのう。




で、大仏殿。

奈良の東大寺大仏殿を意識しまくりの建築様式。




日本中の大仏をこよなく愛している私ですら大仏を前にしてここまでテンションをあげることは最早不可能だ。

このカップルのアゲアゲっぷりに軽く敗北感を憶えつつ、大仏殿の中に入る。






おおお、それでもやはりこれだけ巨大な仏像を見ると私も高揚するのだよ!

お久しぶりでございます。越前大仏サマ。

あちこちで珍寺行脚をした後、貴方の偉大さを再確認しに参りました。



…っと20年ぶりの再会を喜んでいるその脇で「イェ~イ」とカップルが自撮りしまくり。

カップルで大仏見てこれだけテンション上がってるのって、逆に羨ましいわ。お前ら。

つか自分も大仏見てそこまでアガりたいですよ!マジで。




本尊である大仏様は奈良の大仏と同じ廬舎那仏だ。

像高は17メートル


奈良の大仏よりも2メートル高いことをこの寺のサイトではさりげなく自慢している。

いや、気持ちは判りますよ…。




中央の廬舎那仏の左右には脇侍仏が並んでいる。




それもかなりの大きさである。




大仏殿の壁面には数えきれないほどの仏像が並んでいる。




大理石で出来た玉仏だ。




大仏の裏側。

ここにもビッシリ仏像が壁面を埋め尽くしている。




大仏の裏にはフォークリフトが。

コレ、以前も見たが、新しい型になっていた。

さすが地元コマツ、と思ったらトヨタ製のフォークだった。





かつては2階のキャットウォークまで登れたのだが、残念ながら登れなくなっていた。

このように以前に比べると色んな曲面でダウングレード感が否めない印象。


この寺院を建立したタクシー王の多田氏が亡くなってから経営状態が急激に悪化したみたい。

この越前大仏、本来は多田氏が敢えて地元勝山市に税金を納めるために宗教法人化しなかった、という経緯があった。

しかしその後、納税が困難となり、土地建物を市が管理する事となった。

その後、敷地や五重塔が公売に出されたが、買い手も付かず色々な意味でお荷物施設に。


それでもどっこい運営しているのである。




幸い、ユートピア加賀の郷よりは経営状態も初期投資も良好だったゆえ開山当時の姿だけはキープしている。

なので、事情を知らない人が来れば立派な観光施設というか観光寺院に見えなくもない、そんな感じの場所なのです。




心から大仏を愛する私としてはこのような状況を目にするのは大変心苦しい。

しかしリアル現代宗教ウォッチャーとしてはその状況からも目を背けず、忖度なしに真摯にレポートしていく所存でございます。




寺院の構成としては正面の大仏殿の両脇に回廊。


禅寺のような造りだ。まあ、禅寺なんだけど。




そんなこんなで五重塔。



結局買い手もつかず普通にお寺の付属施設として存続している。




金のタスキが眩しいぜ。




軒裏が白いのが特徴的だ。


経営的に難しいのかもしれないが、何とか頑張っていただきたいものである。

という訳で、みなさん福井に行ったら越前大仏に行きましょう。はじめて行ったら豪華でマジ感動するよ。




水子地蔵の絵馬…。



2017.07.
珍寺大道場 HOME